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1.狂犬、誘いにのる?


 ジリジリと太陽の容赦ない熱が今年もこの街を襲う。夏到来だ。

 最近では、温暖化が進み昨年よりも暑く感じる。

「毎度ありがとうございました〜」

 ♪〜♪〜〜♪

 コンビニから出ると暑さが自分を現実に戻す。

 男は、先ほど買ったシャーベットの袋を開けてラムネ味の中身にカブりついた。

「あーうめーっつめてーっ最高じゃネーノッ!」

 男の髪は、目に良い自然(ナチュラル)の緑色。バサバサで痛ついている。

 耳が常人よりは、少しとがっていて『異人』の印象を与えた。

 隣にいた男は、灰色の首元まである長い髪をゴムで縛っている。

「ネーノ オマエ ドレダケタベルツモリダ」

 ビシっとネーノの前に散らかるゴミの山を指す。

 全て同じ種類。どうやらネーノの好物らしい。

 12袋目に突入したネーノは、ヒヒヒ、と笑い

「フーン!これは、マジでうまいんだ!゙」

 お前も食べろと、ナイロン袋から一つ取り出す。

 フーンは、しぶしぶアイスを食べだした。

「……ッ?!?!」

 全て食べ終えた瞬間、フーンは、コンビニの中に駆け出していった。

 

 ネーノがポンと手を打てつける。

「あいつ、腹弱いんだっけ」

 フーンが顔真っ青で戻ってきてネーノは、大笑いした。

「アハハハハハ フーン面白いじゃネーノ」

 クククと腹を押さえながら袋とアイスの亡骸を捨てた。

「…サイアクダ」

 フーンは、聞こえないように小さく呟く。

 ネーノは、それがわかっていたのか、お詫びとしてフーンの口に煙草を入れ先端に火を点ける。

「まぁまぁ」

 自転車のスタンドを上げハンドルを握る。

「後ろ、乗れ♪」

 クイっと親指を後ろに指す。

「?オイ、ドコイクンダ?」

 集会か?と付け足すとネーノは、嫌な笑いを見せる。

「うちの大将が面白いことすんだとよ」

 フーンは、深入れせずに後ろの席にまたがった。

 

 “大将”がいる学校は、それほど遠くはない。

 ネーノと“大将”が待ち合わせをしている私立高校の中央庭園。

 庭園とは、名ばかりで雑草が生え放題だ。

 その中心には、聖像モナアが空を掲げている。

 ここの私立高校は、神・モナアを信教としているようだ。

 当然、ネーノとフーンは、そんなの全く興味がない。

「ここで待ち合わせしてるんだ」

 スタンドを下ろしネーノは、“大将”を探す。

「おい キタz」

 ネーノの言葉が一発の蹴りによって遮られる。

 バタンッ とおおげさに倒れこんだネーノにフーンは、心配せず蹴りを入れた奴を見る。

「D…ヤハリオマエダッタノカ」

 ネーノの屍に足を置きフンと鼻を鳴らす傷だらけの男。大将のDだ。

「ヨクキタナオメーラ♪サッソク ハナシマショウ」

 紅い目が細められ笑顔に変わる。

「アア トリアエズ ソコノシカバネニスワッテハナソウカ」

 ああ、とDもOKを出そうとしたとき屍ネーノが起き上がる。

「お前らふざけんじゃネー!」

沈黙。

「プ」

 誰もいない休日の学校。もうすぐ昼時か。

 2階へと続く階段に3人は、移動していた。

 Dは、煙草に火をつけ息を吸う。

「ンー♪」

 その味に堪能して肺にたまった灰色の煙を吐き出した。

「? オマエ タバコ ヤメテタノカ?」

 いつもの銘柄。いつもだから吸い続けると飽きるものだ。

「ア? チョット オレモタバコヤメヨーカッテオモッテナ デモシッパイ♪」

 煙草を指で挟みもう一本咥える。察したのかネーノが火を点けた。

「で、どこまで続いたんだ?」

「ミッカ♪」

「アハハハハハハ」「プ」

 3人で笑いながら本題へと移っていく。

「ジ ツ ハ コノ3ニンデ エイガツクルコトニシタワケヨ」

 2本同時に吸い大きく吐き出す。もうもうと立つ煙は、ゆっくりと透明な空気の中に馴染んでいった。

「映画?なんだそりゃ」

 もっていたサイダーの飴を口に転がしながら訊く。

「エートナァ……――――」

 

 センセーに呼ばれた俺は、ある宿題を出された。

『アナタたちは、なぜか美術だけは得意のようね。そうだ!』

 映画を作ってみないか、と誘われた。

 当然そんなメンドいことは、俺は嫌だった。もちろんネーノもフーンもそんなことする暇があったら

 喧嘩でもしているだろう。

 嫌だ、と言うとセンセーは言った。

『お金儲けできるんだけどなー』 

 金

 

 金

 金?

『そう。自主映画でそういうイベントにでるの。それがスゴイ出来栄えだったら

ビデオも売れるし知名度も上がる!さらに日本の映画監督になってオファーが来て…』

 あっという間に大富豪よ。

 

 俺は、金と女に弱かった。

 そしてあっさり乗った。

「―――――…トイウワケダ ショクン」

「プ」

「バカじゃネーノ!そんな映画で大富豪とかありえネー…」

 二人の肩にDの両手が重く乗せられる。

「ヤ ロ ウ ヨv」

 

 ………

 脅しだ。

 二人は、首を横には、ふれず(殺されるだろ)縦にふりDの笑顔を買った。

2.狂犬、謎の少女と出会う。

 職員室に出向いた三人。Dがしぃ先生を呼ぶ。

「はい?あー3人でやってくれるのね。先生嬉しいわよ」

「…あーはい…」

 2人は、苦笑いで答える。

「じゃ、この子もださせてあげてね」

 しぃ先生が一人の生徒を呼ぶ。

 そこには、ふんぞり返り三人を見下す女生徒が一人。

 近くにくるとその虎のような威圧がビリビリと三人に重くのしかかった。

 両目の蒼と紅のオッドアイ。みかけたことがない神秘的な存在だ。

「あたし、しぃりゃ。この先生の娘で別の高等学校にいるの。今日は、あたしの映画作りに参加するつもりだけど
…アンタたちにあまり期待はしてないわよ」

「「「……」」」

 三人は絶句している。

 そして最初に文句を出したのは紛れもないDだった。

「オイ センコー!ドーユーコトダッ オレハ ダイフゴウニ ナルタメニナァ!」

 手を上げようとした時2人は、落ち着け落ち着けと宥める。 

 しぃ先生がオロオロとしているとしぃりゃがそれに答えた。

「ヴァーカね。それはただの口実よ。映画製作のためのね。もういいでしょ、そこの漫才トリオっさっさと映画作り
ましょう」

 ふんふん、と鼻歌を歌いながらしぃりゃがどこかへ行く。

 ジトリとDがしぃ先生を睨み上げ

「トーリアエズ……センセ…アノコノコトハマタキキマスネー」

「あ、うん…頑張ってね」

「…イクゾ……」

 クルっと背を向けて歩き出した。


 ネーノとフーンは、とりあえず会釈してDの後をついていった。

 テニスコートで女生徒が一人指し棒を持ってカンペを叩いている。

 どうやらもう自己紹介が済み本題に移っているようだ。

 そこに描かれているのは、4人の名前だった。

「はーい注目。これから役を決めるわ!といってももうあたしの中でできているのよ。ネーノ!アンタは、敵役!」

「なんでオレなんだよっ」

「だってしかたないでしょ。そんなイメージがあるんだから」

 いじけたネーノは、敵役かぁと遠く空を見上げた。

「次にヒーローは……フーンあなたよ」

 Dは、もう灰になっていた。

「オ、オレカヨ」

 動揺を隠し切れない行動にDがキレた。

「オマエダケズリーッ ソレニナンダソノワザトラシイ ハンノウハ?! ヒーローカワレ ヒーローカワレ!」

 泣き叫ぶD。映画、すごい好きなんだよな。

 フーンとネーノは、どうすればいいのかわからずたがいの顔を見ていた。

「監督よ。アナタは」


 ……。

 しぃりゃが差し棒で指す相手は、Dだった。

「エ……シィリャ?」

「あたしは、残念ながらヒロインなの。だ・か・らアンタの好きな方に映画進めちゃっていいわよ。どう?

あ、カメラもしてもらうけど…」

 Dの拳が振るえ

「キタ―(゜∀゜)―(∀゜ )―(   )―( ゜∀)―(゜∀゜)――!!!!」

 天へと突き出した。

 

 3匹の狂犬と一人の女生徒、しぃりゃの映画作りが今始まった。

2.狂犬、映画を作る

 2日目。4人が待ち合わせをしている駅では、休日というのに人の列が絶えない。

 白のシャツでハーフパンツ姿のネーノは、またアイスを食べていた。

「あーっ暑いんじゃネーノ?」

 昨日と変わらず太陽の勢いは、止まらない。

 せめぎあうマンション達を見ていたらますます暑くなる。

「ネーノ ハヤイナ」

 帽子を被り黒のシャツ、青の破けたジーンズ。フーンだ。

「おう!しぃりゃとDは、まだ来てないぜ」

「フーン」

 煙草を咥え火を点ける。灰色の煙が空高く上っていく。

「?髪縛ってないじゃんか」

 暑いのが嫌いなフーンにしては、珍しい。

「イイダロ。ベツニ……」

「そうだな」

 数十分。ネーノとフーンは、少し会話をするだけであとは、言葉を交わさなかった。

「ヨウ♪」

「おっまたせー♪さぁ映画撮りましょう」

 2人は、ラフな格好で気色悪いほどの笑みを浮かべていた。

 駅の電車に乗って揺られ揺られ。

 ついたのは、田舎街だった。

 小さな駅でDが4冊の本を3人に配る。

 題名は

【恋するフーン】

 なんだこれは!!!!!!?

 一番に驚いたのはフーンだろう。

 解説は、しぃりゃがする。

「昨日、Dと話をしたの。やっぱアンタたちにできるのは、こういうラブコメ映画ぐらいかな、ってね。

Dも大賛成してくれたの!もちろんあたしの大好きなバトルもんも入るから!じゃあDよろしく!」 

 しぃりゃがベンチに座り引き継いだDが立ち上がり面前に立つ。

「ヨーシ トリアエズ キャクホンノナイヨウヲ カンタンニセツメイスルゼ♪」

 

 宇宙人であったフーンは、ある日地球人のしぃりゃに恋をする。

 それに阻む悪い宇宙人ネーノ。フーンとネーノのバトル。そしてしぃりゃと無事結ばれるというものだ。

 だがその割には、ペライ脚本だ。

 ネーノがそこを指摘するとしぃりゃとDが口をそろえて言う。

「全部アドリブで突き通す!」

***

 映画製作の始まりだ。

 宇宙人フーンが街中を歩いている。そこをDが黙々とカメラで撮り続けている。

 脚本だとしぃりゃがコケてフーンの手につかまる…。

 がフーンにぶつかったしぃりゃ。

「イッテ、」

「何すんじゃアホ!前気をつけろや!」

 え―――――……。

 アドリブが入る。フーン大丈夫なのか…。焦るネ−ノ。

 彼は、まだ草むらの中だ。

「アアアアア?!オイ ブツカッテキタノハ テメーダロウガ! ウデノホネ イッタジャネーカ」

 あああ……喧嘩が始まるな。

 Dは、ニヤニヤとしている。この展開を待っていたのか貴様!


 ネーノがハァっとため息をつく。

 彼は、まだ草むらの中だ。

「んだとこの灰色男!あたしをなめてんのか?!」

「お前もなめてんじゃねーのかよ!」

 言い争いになっていく。

 そして

「好きだ」

「私も」

 奇妙で不思議で呆然とするしかない展開にもっていかれた。

 ネーノは、ただただ呆れていた。

***

 映画の初めの方の中盤まで行った。

 ここでフーンとネーノのバトルシーンが入る。

 昼休み。ネーノは、脚本を見てちゃんとしたシーンを入れようとしたが

 台詞入ってね―――――!!!!?

 

 初めのフーンとしぃりゃのラブラブしたところしか入っていない。(ここはもう全てアドリブだった)

 ということは必然的にアドリブが入ったシーンしか撮れていない作品になってしまう。

 それを望んでいないのはDだ。

 ネーノは、脚本を殴り監督に抗議をしにいった。

「アー?オモシロケレバイインダヨ!フーンモシィリャモ キタイドオリダ。…オマエモチャントシロヨ。テキナンダカラ」

 

 監督自体が終わっていた……。

 再開だ。

 ネーノは、しぃりゃの持ってきた短剣でフーンと戦うことになる。

 脳はパニっく。

 台詞。台詞……。

「ネーノ オマエトナゼタタカワナイトイケナイ?」

 フーンがまともな問いだ。

 ネーノは、ここで頑張らないと、と短剣を握り締めた。

「しぃりゃは、オレが貰う!だから邪魔なお前を削除するんだ!」  

 木陰で見つめるしぃりゃ。彼女は、寝ていた。


 うううう…と心の中で泣きながらネーノは、フーンに突進する。

「覚悟!」

 ここで多分フーンに切られ…

 そう思った時フーンに抱きしめられた。

「………ハ?」

「オレ シィリャヨリモオマエガ…」

 

 8○1かよ!!!!!


  
 Dもこの展開には流石に驚きを隠しきれなかった。

 

 夕日が昇りとりあえず映画の一部の撮影は、終わった。別の意味でも終わった。

 
 次の日。俺は、風邪で休んだ。
  
 だってフーンもDもあんなヤツラだとは、思わなかったからだ。

 数年間行動を共にしていたヤツラがあんな壊れたヤツらだとは、思わなかった。


 ベッドでゴロゴロとしている自分。

 フーンとDは、今頃何をしているのだろうか。


〜♪〜♪〜♪〜

 と一本の電話が入り子機を手に取る。

「はい、もしも、」

「ツーツーツーツー」

 イタ電かよ。

 俺は、ベッドに伸びをしてまた眠ろうかと思ったとき。

〜♪〜♪〜♪〜

 また電話だ。
 
「なんだ!」

 俺は、乱暴に言った。

 …

「ツーツーツー」

 また切りやがった。

 俺は、腹立たしくなって子機をベッドに投げつけ悪態をつく。
 
 と

〜♪〜♪〜♪〜

 
 また愉快な電子音が鳴りました。

 
 俺は、余裕を与えず子機に出た。


「なんだテメ!俺をなめてんじゃネーノ!!!?」


『キャハハハハ。ネーノ元気?』

「お前……」


 しぃりゃ!


「おい、さっきのイタ電、お前か?」

『うん。そうだよ。一回目は、Dで二回目は、フーンで三回目は、あたし』

 またキャハハと笑うしぃりゃ。何がおかしい。


「何がおかしい!!?」

 俺は、キレた。

 しぃりゃは、黙っている。

 俺は怒りにまかせ次々と暴言を吐きまくった。

「お前、何がおかしくてあんな映画を撮るんだ?!こっちは、嫌なんだ!Dを洗脳みたいなことしやがって!
フーンもおかしい!アイツは、すげぇクールで腹をすぐ壊すんだ!なのに…あんな…こと…」

 俺は、泣いていた。

 数年間の思い出を全てしぃりゃに奪われたようで腹立たしかった。

 Dもフーンも自分に関心がないようでしぃりゃに嫉妬していた。

 それが悲しくて泣いている。

「……うう……」


『ネーノ…泣いてるの?…ゴメン…あたしのせいだよね』

 明るさをなくした落胆の声に俺は、心の中で嘲笑した。
 
 泣き続ける俺に謝り続けるしぃりゃの姿に俺は


 ザマーミロと思った。


「最低だ…俺…」

『え?』

「今、俺すっげ恥ずかしい……」

『え?あんまり聞こえない…』

「いいんだ。気にするな…うんもう大丈夫だ」

『本当?また映画撮れる?』

「ああ」

『よかった!敵役が抜けたら楽しくないもんね!』

 また笑うしぃりゃ。


 俺もつられて笑った。


 数分間の会話をして俺は、切った。

 明日から楽しくなれると思った。


3.狂犬、また復活する


 ネーノの携帯に一通のメールが入っていた。

 出したのは、しぃりゃだった。

 何だ、と思い見てみる。

<待ち合わせ場所 オデン公園 時間 10:00> 
 
 それは、映画を撮るわよ!といった誘いだった。

 ネーノは、身支度をすませ玄関で靴を履き替える。


「ネーノ、どうした?こんな時間に」

 父が首をかしげ聞く。

 ネーノは、笑顔でこう答えた。


「映画撮りに行くんじゃネーノ!」

 

―オデン公園― AM:9・45

 
 ネーノは、また一人早く来てしまった。
 
 一人暗い空を見上げていると鼻の上に何か落ちた。

「?」


 ポタ ぽた


 次々と降ってくる雫にネーノは、ドキっとした。雨だ。

 口に咥えていた煙草の火が消え灰色の煙も空に溶けていく。

 勢いを増していった雨。いつの間にかネーノの周りで遊んでいた陽気な子ども達の姿がなくなっていた。

 

 ザァァアァアァアァア……


 一人ぽつんと立っているネーノ。


 もう10時30分になろうとしていた。 

 だが雨に打たれても待ち続けるネーノ。悪い罰ゲームのようだ。


「…こねぇじゃネーノ」

 
 ザァァアアアアアアアア……バシャッ バッシャッ

 
 水溜りを蹴る音。一つ、また一つ…。

 
「……おせぇんじゃネーノ…」

 
 ネーノの前に現れた

 傷だらけの男と髪の長い男

 そして

 ニっと白い歯を見せる少女。


「さぁ頑張ろう!」

 映画は、昨日ネーノがいなかったためしぃりゃとフーンの会話の部分しか撮れていない。

 でも結構進んでいて。

 D監督がメガホンを手に打て付け声を張り上げる。

「ヨッシャ!アトハ ネーノトフーンノ ヒミツノミッカイノシーン!ソシテ ラストバトルノシーンダケダ!ヨッシャヨッシャ」

 3人は、Dの熱気に当てられたのか負けないぐらいの声で返事をした。


 しぃりゃは、木陰の中で休んでいる。

 ネーノとフーンだけのシーンが撮られていく。

 城、のようなセット(ハリボテ)にフーンがため息をつきネーノが草むらから現れる。

「よう…フーンじゃネーノ」

 軽いノリだがフーンは、警戒態勢を見せ剣を出す。

「オマエ!ナニシニキタ?!ヘンタイカ!?」


 何故変態?


 落ち着け、とネーノは、肩をすくめる。

「お前と仲直りがしたい。どうだ?お前、先日俺が好きになったっていってたじゃネーノ?」

 フーンは、首を横に振る。

「オボエテイナイ」

「…そうか…」

 あれだけ衝撃的な発言を、ね…。

 ネーノは、ニっと笑い両手をいっぱいに広げた。

「フーン!飛び込んで来い!俺に似合うのは俺さまだけじゃネーノ?!」

 フーンは、唖然としている。
 
 雨風は酷くなる一方。城のハリボテもガタンと落ちてフーンが長いハシゴの上にいたことが露になった。

 そんなの関係なしに録画は進む。

 
 沈黙の空気。そしてフーンが口を開く。


「明日、決闘を申し込む。しぃりゃとお前どちらが俺にふさわしいか見てやる」


 俺様気取りか。


 面白い、ネーノは、フーンに刃を向けた。


「よっしゃ!その決闘のってやるんじゃネーノ!」


 
***

 雨もひどくなったので近くの体育館で撮影が行われた。

 無許可だがDとしぃりゃの怒号で先生たちも引かざるしかないだろう。

 
 しぃりゃがタオルで髪を拭き新しい衣装に着替えた。公然の目の前で。

 一番興奮していたのは、Dだった。


「ウッヒョーーーーーーーーーーーソノママプリーズ!シィリャちゃ ギャボベ!」

 しぃりゃの右拳がヒット☆

「…氏ね…」

 そう一言言って黙々と着替えを済ますしぃりゃだった。


「ヨーシ コレデオワリダー キバッテイコー」

 Dが辛そうだ。無理もない左頬が膨れているからだ…。

 カメラが回されるとしぃりゃ、ネーノ、フーンに緊張が走る。

 そして思う。


 いつもどおりに、と。


 剣を持って貴公子のような姿のしぃりゃが真ん中へと行く。

「フーンさんは、あたしが貰うの!アナタのような下賤の民に渡すものですか!」

 ネーノは、日本の剣士のようなしぶい格好でなんかあっていなかった。

「フーンは、俺が好きなんじゃネーノ?お前に渡すわけネーノ!」

 フーンは、女の子らしく(キショイ)頑張ってと言う。

 この位置は、しぃりゃだったのだが。4人とも初期設定なんか忘れていた。


 いざ!

 
 二人の声が混じる時決選が始まる。

 まずは、剣が交え二人とも距離を置く。最初に突きを出したのはしぃりゃだった。

 狙いは、腹。
 
「うぐ!」

 数秒、剣を振り落とすのが遅れ腹に剣が一線の傷をつける。

 おもちゃだがその摩擦で結構痛い。

 ネーノは、ヒっと笑いを漏らし背後で背を狙うしぃりゃに足蹴りを食らわせた。

 顔面の右側で蹴り飛ばす。

 ダンッ! 体育館の壁で勢いよく打ち付けられしぃりゃは顔を歪めた。

「〜〜〜…っ…」

 小さな悲鳴は、ネーノの剣の振り落とした音でかき消える。

 間一髪。床に転がり刀から逃げられたしぃりゃは、低く体勢を保つ。

「終わりじゃネーノ!」

 ダダダダダダダダッ スッ! ネーノがギロチンのように刀の刃を上に上げ

「ったぁああぁ!」
 
 一陣の風のように長い刃が上へと突き上げられそして

 
「ぐぎゃ!」「きゃっ」

                                          
 ネーノの刃は、しぃりゃの肩に。しぃりゃの刃はネーノの腹ど真ん中へ「貫いた」。

 その場で倒れ咳き込む二人。勝者は……。


「フタリトモ ケッコンシテヤル」

 
 しぃりゃ、ネーノ。どちらもだった。

 決闘をして汗だくの二人は、互いの顔を見合わせ


「「ありがとう」」

 
 そう呟いた。
 


4.狂犬、しぃりゃとの別れ

 視聴室で昨日撮った映画の上映が行われていた。

 しぃりゃが作った自前のオープニングFLASH。素人なのかと思うほど出来栄えは最高だった。

 だが

 中身は、最悪。

 前半は、イミフメイな○01になりネーノが見ていないしぃりゃとフーンの会話のシーンは…。


『ああ、フーンさん…お茶を持ってきました』

『ああ、ありがとう…しぃりゃさん』

『いやだわ。しぃりゃでいいのよ』

『んじゃオレは、フーンでいい』

『フーンさん…』

『いやフーンでいいって』

『フーンさん』

『いやフーンで(ry)』

 の繰り返し。面白くもなんともないシーンだった。

 後半。ネーノには、すごい自身のあったシーンだ。

 だが雨の音で何を言っているのかさっぱりわからない仕様だ。おまえけに画面に水滴が垂れて垂れて。

 しぃりゃとのバトルシーン。

 ここだけがもう最高の場面だ。しかし。


「カットォォォ!スゲェイイ!スゲェイイ!モウシブンネェ!」

 
 と監督の絶賛の声が飛んでいた。それ以外のシーンにもカットォォォ!」の声が…。


「はぁ……なんだこれ」

 苦笑いを浮かべ泣きそうになるネーノ。 

 だが他の三人は。

「上出来!」

 顔をほころばしていた。

「これじゃあハリウッドの誘いもあるかもね!」

「オレ ダイフゴウカヨ!」

「マテマテ ソンナコトアルハズ…アルヨナ」

 Dとしぃりゃは、HAHAHAHAHAHAっと高らかに笑ってネーノを見る。


「…なんだよ」


 その視線にドギマギしているのかネーノは、顔を赤らめていた。

 しぃりゃとDは、声をそろえる。


「ありがとう!ネーノくん!」


「……おう…」


 ネーノは、誰にも見られないようにクスリと笑った。

 破天荒な少女の作った作ったこれまた最高のエンディングロールが終わり

「モウイッカイ」

 傷だらけの喧嘩ボーイの監督が巻き戻しを押した。  
 

 数回見て流石に飽きてきたのかリモコンの「停止」を押した。

 


 DVDにダビングしてしぃりゃは、大事そうに見つめていた。 

 ネーノなどの一般人から見れば奇想天外だと思うものだが

 しぃりゃやDから見れば宝物の一つになった。

 学校の玄関。

 お別れか、と三人が思ったときしぃりゃが言った。


「これから散歩しようよ!」


 川原に来てしぃりゃは、小さな石を摘む。

 ブーメランでも投げるような持ち方で川へと飛ばす。
 
「えい!」
 
 小石は、川に落ちるのではなく

 
 1、2、3、4…跳ねて跳ねてポチャンと沈んだ。


「へー上手いんじゃネーノ…」

「ほら、D、ネーノ、フーンやってみなよ!」

 その誘いに一番にのったのは、紛れもない…Dだった。

「オレサマハ コノイシアソビノタイカイデ ユウショウシタンダゼ!ミヨ コノ ウツクシイワザヲ!」

 一人で騒いでいるわりには、あまり跳ねず小石は、何も言わず沈んでいった。
 
「優勝者って…そんなもんなんだ…」

 ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる少女にキーーーッとDは、小石をやけくそに投げつけた。

「オイ ヤメロヨD……」

「ウルヘー!オマエラモ ヤレヨ!」

 ネーノとフーンは、顔を見合わせやろうか、と笑顔で言った。

 
「こうやって…ね。そうそうフーン上手いよ!」

「フーン!?できてるじゃネーノ?」

「ナンダヨ! オレサマダッテ!」

「じゃあD、競争しようぜ。あのこけが生えた石の所までな」

「ゲゲ トオ……」

「どうせだからさ!みんなでやろうよ!」

「それもそうだな!」


「ヨーシ…」


「イッケ!」「いっけーっ」「………」「オレがいくんじゃネーノ!」


   

 川原。3人と向かい合う一人の少女は、少し泣いているように見えた。


「あ、…D、フーン、ネーノ…あたしの映画製作に付き合ってくれてありがとう」

「オウ」「ン」「………」

「これをあたしの学校で見せて泡ふかせてやるわよ!」

「ハハハハハハハ オレモ イベントニモッテイッテ カネモウケスルンダ!」

 2人は、お互いの野望を胸に別れを告げた。


 秋に変わる涼しい風が吹く。

 狂犬の三人は、しぃりゃと出会ったことをゆっくりと思い出していく。

 初めのあの虎のような威圧が映画を作っていくにつれ優しいモノへと変わっていった。
 
 人が、変わっていったんだ。
  
「…オレ、この映画やってよかったと思う」

「ダヨナ オレモダヨ」

「………アア」

 俺達もだ。

 なぜか優しくなれた。

 しぃりゃの文化祭が良く終わったのか悪く終わったのか

 それは、しぃりゃ自身が知る。

 狂犬組の三人は―――…。

「…なぁ…」

 ネーノが地面から起き上がり膨れた頬を撫でる。

「なんで俺達殴られてんの?」

 イベントに失敗し儚くDの野望も潰えた…。

 END!

 あとがき

 狂犬組と一人の少女を出して映画を作る…いかがでしたか?この破天荒な物語は。
 よかったら感想とかくださいね。^^*
 とおりすがりの少年でした!