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数ヶ月前から始めていた通院もすっかり止めてしまった。
いや、オレに何かしら問題があるわけではなく、彼女に問題があったのだ。
彼女は今時珍しい病気にかかり、今でも病院の白いベッドで横になっている。
何もしてやれない・・・
唯彼女の体にウィルスが蝕んでいくのを見つめるだけ・・・
だけど、もうそんな心配は要らない。
彼女といつまでも一緒に居る・・・
其れがオレの決めたことだ。
だが、通院に行っても彼女の狂った顔を一日中見るのがもう嫌になっていた。
段々と闇黒がオレの心を蝕んで行き、性格まで変わってしまった。
オレは・・・彼女を助けられるのか・・・

雨。

オレの一番嫌いな天気だ。
ポタポタと水滴が落ち、コンクリートの地面に薄らとシミを付けていく。
今日も倦怠感と戦いながら、朝飯を食べ、登校する。
オレの黒い傘に一定の間隔で水滴が落ちる。
目の前は霞みかかっていたが、オレは気にせず先を歩く。
偶に見つける水溜りに靴を濡らしながらも、オレは歩いた。

学校・・・

下らないガキの集まりだといつも思う。
アホみたいな雑談。
何の意味も成さない女子の恋話。
オレはこのクラスの黄色い騒音が大嫌いだった。
ポケットからMP3を取り出し、耳につける。
少しはましになるが、それでも煩い。
君を失ってからこの退屈な時間は更に辛くなる。
だが、オレには友達がいる。
一人の大親友が・・・
いつもと同じ時間。
あいつは必ずこの時間にオレを呼ぶはずだ。

「お〜い、フサー」
オレはいつも聞こえない振りをしてやり過ごす。
「フサ。また音楽聞いてんのかよ?」
オレの親友はオレに向かって言う。
「悪いかギコ? オレはこのクラスの黄色い騒音が大嫌いなんだ」
片方のイヤフォンを耳から抜き取り、ギコに素っ気無く言う。
「お前もかなり変わったよな〜。あいつがいた頃は、お前いつもハジケてたのに・・・」

溜息をつきながらギコは言う。
オレはあの話をされるといつも心が亡くなった様な感覚に襲われる。
まだあいつを諦められない心がオレの中にまだあるのか・・・

「あの話をするのは止せ・・・」
オレはマジな顔でギコに言う。
「何でさ・・? お前まだあいつの事好きなんだろ?」
「五月蝿い・・・あいつは・・・死んだんだ・・・」
そうさ、あいつは死んだ。お前だってわかってるくせに・・・アイツの姿を・・・変わり果てた姿を。
お前にオレの気持ちがわかるわけが無い。

「ああ、あいつは死んださ・・・だけど、あいつと一緒に居てやれる事は出来るだろ?
お前の知ってるあいつは死んださ・・・だが、まだあいつは生きてる。だったら、一緒に居てやれよ」
ギコの言葉にオレは胸を打たれる。
そうだ・・・オレはまだあいつが好きなんだ・・・
あいつがどんな状態だったとしても・・・
オレは、あいつが好きだ・・・

二幕   〜此処からは三人称視点で行きます〜

事の始まりは、約二年前。
ギコとフサがAA中学校に入学してきた。
ギコとフサは小学校からの親友で、何でも打ち明けられる無二の親友だった。
二人は直ぐに学校に打ち解け、友達も沢山出来た。
そして・・・

〜2004年 フサ中1〜

「遂にオレたちも消防脱出だぜ!」
ギコはフサの隣の席だった。
後ろには雪のように白いAA・モナーと前には青紫色のAA・モララーが居た。
モナーとモララーはギコ、フサの一番最初に出来た友達で、ノリも良く、良く四人で遊んでいた。
ギコは一人で意味不明な言葉を発している。

「何ヶ月前の事モナよw?」
「だが、未だに俺達厨房だからなw」
モナーが突っ込み、モララーが少しぼける。
通常ならそこで、フサが突っ込みを入れるのだが、今日は少し様子が違った。
「・・・・・・・フサ?」
突っ込みを待つのに耐え兼ねたモララーがフサに近寄っていた。
「お〜い、フサー!」
フサは一点の方向を見たまま動かない。
目もボーとして、まるで自分だけの世界に逝ってしまっている様だった。

「・・・・・・?」
モララーはフサの視線を追ってみると、其処にはほかの女子と駄弁っている真紅のAAつーがいた。
「フサ!いい加減おきろ!!」
モナーとギコはモララーがぐうたらやってるのを見兼ねたのか、フサをたたき起こす。
「う〜ん?授業始まったか?」
「今は昼休みだボケ!」
珍しく、モララーが突っ込む。

「それにしても、お前、つーなんかじっと見てて何かあったのか?」
モララーがフサの頭を一回叩いた後にフサに聞いた。
「!? いっ・・・いや! なんでもないよ!」
フサが顔を真っ赤にしながら慌てふためく。
「ま〜さ〜か・・・お前・・・つーに惚れたのか・・・?」
ギコが、怪しい目つきでフサに問いかける。
其れと同時に、フサの顔が一気に紅潮する。
「ふ・・・ふざけるな! 誰があんな奴なんか!」
フサは必死で弁解するが、嘘だということがバレバレである。

「まぁ、そういうなって、ギコもしぃの事がすk」(バゴォォン!
モララーが皆まで言おうとした瞬間。ギコの怒りの鉄槌がモララーの頭に降り注いだ。
涙目で恨めしそうにギコの顔を見るモララー。

つーというのは男勝りな女子で、運動神経抜群、女子最強の異名を持つ女とは言えないほどボーイッシュな女子である。
男子との付き合いも良く、男子女子を問わずに人気者だった。
フサはそのつーに惚れたのである。
フサは馬鹿にされたためそそくさと先に弁当を食べ、教室から出て行ってしまった。

「あ〜あ、ギコがフサを馬鹿にするから、フサ拗ねちゃったモナ」
モナーはギコの事をじっと見る。
「な・・・なんだよ・・・」
「なんでもないモナ」
「まぁ、気にすんなよ・・・そのうち機嫌直して戻ってくるだろ・・・」
モララーはフサが出て行った扉を見つめ、ギコたちに言った。

一方フサは・・・・・・
「はぁ・・・・なんであんなハードルの高い奴好きになっちまったんだろ・・・」
フサは校庭の小石を蹴りながら呟き、近くにあった大木に寄りかかった。
「アヒャ!誰を好きになったんだ?」
突如、後ろから、聞き慣れた声がした。
声を聞くだけで、心臓の鼓動が早くなる。
この人は正しく・・・・

「つ・・・つ・・・つー! こんなとこでなにやってんだ・・・!?」
フサは舌を噛みまくりながらつーに向かっていった。
目の前には真紅の体に似合わないセーラー服。
きらきらと光り輝く鋭く優しい黄金色の目。

「アヒャ、食休みさ。オレ、この場所が一番好きなんだ」
つーはフサを見下し、その後で、大木に目を上げ、フサに向かって言った。
「で、誰を好きになったのさ・・・?」
興味心身でフサに聞いているつー。人のプライバシーなどお構い無しだ。

「お・・・お前には・・関係ない・・・」
フサは勇気を振り絞って、つーに向かっていった。
「アヒャヒャ・・・連れないねぇ・・・まぁ、いいや・・・」
つーはゆっくりと、フサの横に腰を下ろす。
フサの心臓の音はかなり大きくなってきた。

「そういや、お前って誰?」
つーの予想外の質問にフサは一瞬質問の意味がわからなかった。
口をぽかんと開けたまま、つーの記憶力の無さにあきれていた。

「オレの名前はフサ!お前と同じクラスだろうが!!」
フサはつーに向かって大声で言った。
耳を塞ぎながら片目でフサを少し睨むつー。
「其処まででかい声で自分の名前名乗るなよ・・・恥ずかしいな!」
しかし、此処までつーと仲良く話したのは初めてだろう。
そう思うだけで、フサは胸の鼓動が早くなっていった。
他から見ればフサの挙動不審な行為でつーが好きだと直ぐにわかるはずなのだが、つーは相当鈍感らしく、フサの気持ちなど全くもって分っていなかった。

「にしても・・・此処いい場所だな・・・」
つーと長い時間いたためか、フサは落ち着きを取り戻していた。
落ち着きを取り戻すと、周りの環境にも感覚がいって行く。
フサは今居る状況がとても素晴らしい状況だと分った。
もう夏の初めだというのに気持ちのいい気温。
時折強くも弱くも無く絶妙の強さで吹いてくる生温かい風。
その風に揺られ綺麗な音を奏でる大木の葉。
その気持ちよさに、フサは感嘆の意味での溜息を漏らし、独り言か、つーに向かって言ったのかは分らないが言葉を放った。
だが帰ってきたのは・・・・

「スー・・・・スー・・・・スー」
心地よさそうに寝息を立てる音のみが返ってきた。
ゆっくりと頭を動かし、つーの姿を見る。
其処には軽く頭を肩に預け、手は草の上に放り出され、ヒラヒラと揺れるセーラー服を着たつーの姿があった。
「う・・・やべぇ・・・・マジ可愛い・・・」
フサはその姿にまたもや心臓が活発に動き出す。
だが、少しすると、フサも不意に睡魔の襲われてきた。
まぶたの重さに目が耐え切れず、目が閉じる。
予鈴が鳴ったのはその直ぐ後の事だ。

教室・・・
「そういえば、フサ帰ってこないモナね」
予鈴が鳴ったのに帰ってこないフサの事を心配しながらモナーは言った。
「ギコが言った事で、すねてるんじゃないのか?」
少し、意地悪な事をギコに向かって言うモララー。
「拗ねた位で予鈴出遅れるかっての」

モララーの意地悪な意見はギコのまともな意見にあっけなく粉砕されてしまう。
フサの帰ってくる気配は少しも無く。刻一刻とチャイムの時間は迫ってくる。
モナーたちは今更だが、女子陣の方も騒がしくなっている事に気づいた。
ギコは女子とも仲の良い人気者のウララーに事情を聞いた。
都合の良い事に、ギコとウララーの席は隣同士だった。
ウララーの話によると、どうやら、つーが帰ってこないらしい。
昼休みの中ごろに、食休みに行くといいながら外に出て行きっぱなしのようだ。
ウララーの話を聞いている最中に、何とチャイムが鳴ってしまい、先生まで来てしまった。
ギコは、モナーたちを誘い、先生に訳を話し、校庭へフサたちを探しに行った。
いつもは唯広いだけに見える校庭だが、今日はとても綺麗に見えた。
刺す様な日差しが太陽から照らされ、校庭をビーチのように輝かせていた。

だが、ギコたちにはそんな事は気にしていなかっただろう。
何故なら彼等は友を探しているのだから。
先生に五分以内といわれていたから。
ギコたちが懸命に探しているにもかかわらず、フサは気持ちよさそうに熟睡していた。
つーはというと、風によって落とされた葉っぱが顔に付いたのを節目に、少し目を開けた。
だが、一瞬でパッと目を見開き、黄金色の瞳を覗かせた。

「不味い・・・あのアホ教師にどやされる・・・!」
つーは焦った表情に変わり、いつもの癖か、左右を見渡すと、自分の横にスヤスヤと寝ているフサの姿を見た。
「あ・・・こいつは確か・・・フサ?だっけ・・・何でも良いけど・・・寝顔は可愛いんだなw」
少し、フサに向かって微笑みながらフサを横にかくかく動かしながらフサを起こす。
「おい!フサ!起きろ!授業始まるぞ!」
つーの言葉に一瞬で茶色い目をカッと覚醒させ、あためふためき始める。
「わ!此処何処だ!?オレは何してるんだ?!」
フサの異常ともいえるほどの驚きぶりに、つーは少しカチンと来て、フサを少し殴った。
「うるせぇぇ!」
つーの鉄拳が、フサの頬に当たり、フサは一メートルほど吹き飛ばされる。
フサは頬を押さえながら蒼いズボンとブレザーをはたきながら起き上がる。

「いきなり何するんだよ!つー!」
ギコたちはフサの叫び声を聞いたのか、大木があるほうまで走っていった。
そこで見たのは、フサとつーが言い争っているところだった。
「おい!フサとつー!授業始まってるぞ!」
ギコの声を聞き、われに返るフサとつー。
喧嘩しているところを見られたためか、二人の顔は真っ赤に染まっていた。
つーの顔は真っ赤に染まっていたかは判らないが、雰囲気的に・・・

教室・・・
つーとフサは先生にこっぴどく絞られていた。
普通なら厳重注意で住むのだが・・・
つーの反抗的な性格と、フサの能天気な説明に先生は怒ったらしい。

「よぉ、フサ!さっきはこっぴどく絞られたようだなw」
笑いながら、ギコは頭をカクンとたれているフサに向かっていった。
その言葉にフサは一瞬で顔を向け、席に付いた。
「うるせえよギコ・・・あんなに絞られたの初めてだ!」
そういってフサは机の上で腕を組み、その中に顔をうずめる。
「情けない奴だな・・・」

すると、直後にギコでもモララーでも、モナーでも無い声がフサの耳に入る。
無意識に顔をあげ、声の主を見る。
印象的な真紅の体。
黄金色の美しい瞳。
つーだ。

ガタッ!

フサは一瞬で机から飛び上がり、つーを見据え、少し小刻みに震えていた。
それを怪訝な顔をしてフサの事をまじまじと見るつー。
そして、終始小刻みに震えているフサにつーは少し吹き出してしまった。
「アヒャヒャヒャ!お前、面白いな〜!」

彼女特有の不思議な笑い声。
陽気で少しおかしな笑い声。
その笑い声にフサは無意識に恥ずかしくなる。
両頬を真紅に染めながらフサはつーに言い返す。
「何がおかしいんだよ・・・・」
だが、つーの笑い声が止まる事は無かった。
段々、フサは腹が立ってきた。
そして思わず・・・

「煩いな!何がおかしいんだよゴルァ!!」
フサは言った瞬間に後悔した。
つーは黄金色の瞳を大きく見開いてフサの事を見つめていた。
フサは決まりが悪くなり、謝った。
「悪かったよ・・・突然怒鳴って・・・」
しばらく痛いほどの沈黙が流れた後につーはまた笑い出す。
「やっぱりおもしれぇ〜!!」
フサを指差しながらつーはまた爆笑の溝にはまる。
フサは顔を真っ赤に染めながらつーに向かって怒っていた。
「なんか、お似合いかもな・・・」
「そうモナね・・・」
モララーとモナーはフサとつーの変な駆引きを見ながら恋話に花を咲かせていた。
ギコはというと・・・
「zzz・・・・zz・・・・・zzz」
なんと、気持ちよさそうに寝息を立てて寝ていた。

三幕

2005年 フサ中二。
時が経つのは早いものでフサ達はもう中二になっていた。
今日は晴天。
桜も満開で、道路を歩けば桜の絨毯が学校までの道程を案内してくれた。
フサたちの学校には桜が沢山植えられているため、校庭があっという間に桜の絨毯で覆われた。
静かで綺麗な朝のはずが誰かの悲鳴で台無しになった。

「ギャァァァァァア!!」
通学路であろう道路を二人のAAが追いかけっこをしていた。
茶色いフサフサの毛並みが目立つAAと血のような真紅のAA。
茶色いAAは涙を流しながら全速力で走り、それを真紅のAAが包丁を持って追いかける。
赤の他人が見れば危険極まりない行為だが知っている人ならばこの二人にとっての日常である。
まぁ、異常であることには変わりないが・・・・

「うわぁ!」
茶色いAAは遂に真紅のAAにつかまってしまった。
真紅のAAの包丁が太陽の光に当たり、眩しいほどに光っていた。
「刈ってやる!」
バリカンの要領で包丁を横に傾け、フサの毛を刈って行った。
数分後・・・・
毛狩りは終わったのかつーは包丁を動かす手を止め、包丁を元に戻し、フサを置いて先に行ってしまった。

_________学校。
ホームルーム開始のベルと同時にドアが乱暴に開けられた。
其処に立っていた何者かによってクラスは一瞬で大爆笑の渦に飲まれた。
ドアのそばにいたAAの茶色いフサフサの自慢の毛であろう毛が、毟られている様に刈られていた。
その大爆笑に傷ついたのか茶色いフサフサのAA。通称・フサは席へとトボトボと歩き座る。
先生も笑いをこらえるのに必死なようだ。
手を口元に当て、必死で笑いをこらえてる姿が顔から滲み出ていた。
先生が落ち着きを取り戻すと同時に横に座っているギコがフサに何かを聞く。

「おい、またつーに刈られたのか・・・?」
その問いにフサは少しギコに向かって睨む。
そんな事今聞くなと言いたげに・・・
ギコは今聞くのは間が悪いと思い、後で聞くことにした。

昼休み・・・
昼休みの開始を告げるベルによって教室は騒々しくなる。
友達を誘う声や、机を動かす騒音などによって・・・
この時間になると御馴染みの学校放送が始まるが、当然誰も聞いていない。
友達などの話に花を咲かせながら皆は家から持ってきた弁当や購買部で買ったパンなどを食べている。
フサは中一と同じようにモナー、モララーそしてギコと一緒にご飯を食べる。
フサの弁当は日の丸ご飯にハンバーグやロールキャベツなどの至って普通の弁当。
ギコはフサとほとんど同じで、モララーは購買部で買って来たらしい焼きそばパンとカレーパン。
モナーの弁当はと言うと・・・

「おいモナー・・・それは流石におかしいだろ・・・」
フサがモナーの弁当を見ると同時にすかさず突っ込みをかます。
見た目は迅速の突っ込み、だが、モナーの弁当は突っ込まずに入られない内容だった。
大きな弁当箱の中にただ、白いご飯が入っているだけ・・・
おかず、ふりかけなどは一切無い。
正にモナーと一緒の真っ白い弁当だった。

「何モナ?何か変モナ?」
この弁当が正常と言うようにモナーはフサたちに返す。
それを聞いたフサたちは呆れたようにもう良いと言った。
彼等の話はゲームや近頃の話題。
彼等中学生にとっては何の変哲も無い普通すぎる話題。
話題が終わる頃には大体のご飯が終わっている。
そして、フサは席を立つ。

「ちょっと散歩してくるわ・・・」
フサは何気ない表情で言ったが、頬に少し紅を染めていたのは気のせいであろうか・・・?
ギコとモララーは行って来いとさりげない挨拶を言うが、モナーは口に例の白いご飯が沢山入っているらしく、
口の中でモゴモゴ言っていた。
彼流の言ってらっしゃいなのだろう。
フサはギコ達に片手を振って答え、教室から出て行く。
それを見守った後にギコ達は何やらヒソヒソ話を始める。
話題は勿論・・・フサだ。

「なぁ、フサとつーってどれくらいのとこまで行ってると思う?」
モララーが話を切り出す。
その話にギコが食いついた。
「結構良いところまで行ってるんじゃないのか?毎回一緒に登校してるしさ・・・」
ギコたちが意味の無いヒソヒソ話をしている間に、フサは校庭の大木の下で心地よい春の微風に当たっていた。
そのときフサのまぶたが無意識に重くなる。
それと同時に何かがフサの肩に触れる。

「おい!フサ起きろ!」
その声にフサは重たかったまぶたが一瞬で軽くなる。
それと同時にまたあわてる。
「わ!此処何処だ!?」
いつものシチュエーションにつーは呆れ、フサに優しく声をかける。
「これで何回目だ・・・フサ・・・」
真紅のAAつーは右手で頭を抱えながらフサに向かって言った。
フサはまた記憶を取り戻す。

「あ・・・悪いつー・・・いつもの癖でさ・・・」
フサは頭をかきながら大木の下へと座る。
つーも其れにつられ一緒に座る。
そして、彼等は微笑みながら会話に話を咲かせる。
日常生活の事、友達の事、世界の事、そして・・・
「そういえばつー。病気のほうはどうなんだ?」
フサは少し心配しながらつーに向かって聞く。
つーは少し顔を俯け、そして言った。

「良くなってはいるぜ・・・でも、偶にオレの事を蝕む・・・」
つーが持っている病気は長すぎていえないが、アヒャ族やつー族に偶に出る病気で、
感情が壊れ、笑い続ける事しか出来なくなると言う病気だ。
この世界でのアヒャ族は感情のコントロールがちゃんと出来ていて、他の人でもちゃんと接する事が出来るが、
この病気になると、完璧に壊れてしまう為、他のAAとコミュニケーションをとる事すら不可能となってしまう。
だが、この病気は大分前に解決法が見つかり、治す方法も見つかっている。
早期発見の場合のみの話だが・・・
つーの病気の進行度は至って普通。
薬の摂取を続ければいつかは必ず治るはず・・・
偶に自己症状が出る事もあるらしく、そのときは元に戻るまで笑い続けさせれば良いのだ。
陰気な雰囲気に少し気を使ったのか、話題を変えるフサ。

「なぁ、家族の事教えてくれよ」
話題を変えるためにその話題はなんだと突っ込みたくなるが、フサは真面目なようだ。
だが、つーはそうは思っていないらしい、笑いながら「嫌だね!」と元気に答えた。
彼等の楽しい時間もそろそろ終わりを告げる。
フサはいつもの癖か学校にある時計を見る。

「あ、つーちゃんそろそろ戻らないと、怒られるよ・・」
つーの手を握りながら一緒に起き上がる。
フサとつーは制服についた砂をはたき、校舎へと戻って行った。

校舎へ戻り、席へ着くや否やギコたちが冷やかす。
「よぉ、フサ。
どうだったんだよえ?」
全く持って意味不明な感じの質問をいきなりフサに聞くギコ。
「ギコ・・・其れは意味不明だからな!
つーとはうまくやってるのかよ?」
ギコとモララーとの質問攻めにフサは頭が痛くなってきた。
そして、堪忍袋の緒が切れたのか、いきなり叫ぶ。
「やかましいぞお前達!少しダマレやゴルァ!!」
その叫び声に少し後ずさりし、わかったよと少し言ってフサから身を引いた。
モナーはフサのプライバシーを侵す気は無いらしい、席に座ってギコたちの駆引きを冷たい眼で見て居た。
「ギコたちもう止めるモナ・・・
これはフサの問題モナ。モナたちが口を出すことじゃないモナ」
モナーの一番まともな意見にフサは心の中で礼をたくさん言った。
(モナー。恩に着るぜ!)
___________放課後____________

朱色の太陽が地平線の彼方へ沈む頃、二人の学生が桜で出来た絨毯の上を歩いていた。
二人とも笑顔で何かをしゃべりながら歩く。
楽しそうに、彼等にとっては至福のひと時だろう。
絶妙の強さで風は吹き、その風に吹かれ桜はヒラヒラと空を舞う。
ゆっくりと彼等は歩く。
彼等が歩くこの小道を抜けると大通りに出る。
多分彼等にとっては、其処が二人の別れの道なのだろう。
小道は結構な長さがあるが、至福のひと時を感じているだろう彼等には短すぎる道。
しばらくした後で、彼等は大通りに出て二人は別れを告げる。
いや・・・全てへの別れだったのかもしれない。
何かをやった後には誰か一つは後悔するだろう。
あの時ああしてればよかったなど・・・
フサがつーに挨拶をしていると真後ろから近づいてくる影。
一切何も通らないはずの小道から・・・
気づくはずもない。
大通りから小道は明らかに死角に位置する場所だったのだから。

突如、フサの体が宙に浮かぶ。
フサにとってはこの時間が一番長く感じたかもしれない。
宙に浮いている時間の感覚がすぎると、ガクンと膝が折れるような感覚に襲われ、重力に引き戻される。
フサが道路に吹き飛ばされ、倒れているとフサは体の異変に気づく。
痛みが体全体にはない。
道路に打ち付けられた背中の痛みしか感じない。
不思議に思い、閉じていた目を開ける。
其処に倒れていたのは・・・
「つー・・・・ちゃん・・・?」
真紅のAAは道路に倒れていた。
自らの色と同じ、真紅の液体を体中から流し、目はつぶっていた。
その悲惨な有様に、フサは少し硬直する。
一陣の風がフサの毛皮と肌をなでる。
その直後に我に返ったフサは、つーへと大急ぎで近寄る。
幸運な事に息はしていたが、今にも止まりそうなほど弱弱しかった。
まるで、電池が無くなり掛けてきた時計のようだ。
つーの命に寿命が着たのか?
いや、そんなはずはない。
そんな事があって良いはずがない。
根拠のない確信を胸に抱きながら、目の前で倒れている少女の体を自らの腕で抱え上げる。
血の生温かさと、今にも消えそうな炎のような小さく、だが、確実なぬくもりを絶やさないようにゆっくりと抱え上げる。
不運な事に携帯がない、公衆電話もない。
周りに人も居ない。

絶望的な環境。

最終手段は・・・

彼女を・・・

担ぐ。

少女とはいえ、自分と同じ体格を持つ彼女を背負うのは少し無理があるが、フサは担いだ。
絶望的な状態になると、人は自らの能力以上の力を出せるものだ。
火事場の馬鹿力というやつだ。
彼女の体を背中に背負い、近くの病院まで走りに走った。
何か強烈な意思が、フサの体を突き動かしているように・・・
フサは短距離は得意だったが、長距離は苦手だった。
だが、彼は今、息切れ一つしないで、唯真っ直ぐに病院へと走っていた。
一刻も早く。
彼女に点っている微かな命の炎を絶やさないように・・・
_____________病院_________________

どうやら、つーが力尽きる前についたようだ。
だが、彼女の意識はもう程遠い。
気を失ってもおかしくない状況でかろうじで意識を保っているように見えた。
呼吸は荒く、だが、小さい。
呼吸回数は多いのだが、出す量と吐く量が正常時とは違って極端に少ない。
つーの状態はもはや、生と死の狭間であろう。

緊急病棟でフサは必死にナースに向かって叫ぶ。
命の灯火が消え掛かっている彼女を救うために・・・

彼女に救って貰った命を彼女に返すために・・・

つーはナースと医者と共に手術室に運ばれる。
緊急の手当てと、持病と怪我による併発病を発生させないために。
フサは手術室の前でじっと座っていた。
何時間も・・・彼女の朗報を聞くために、大人しく待っているのだ。
いくらわめき散らしても、慌てても、彼女の意識が早く回復する訳でもない。
彼女の状況が良くなるわけでもない。

フサは、何故かこの時だけおかしいほどに冷静だった。
それに、頭の中にあるものは何もない。
無と白の世界が頭の中に広がっているだけ。
目に映っているはずである病院の灰色のタイルも頭の中に一つも入っていかなかった。

数時間がすぎた後で、緑色の作業着を来た医者が手術室から出てくる。
音は流石に耳と頭に入ってきたらしい。
ドアが開く音と靴の音に頭の中の無と白の空間が一瞬にして崩れ去る。
フサは医者に飛びつくように聞く。

「つーちゃんの状態は如何なんですか!?」
結構な音量でフサは叫ぶ。
其れを落ち着かせるように右手を前に出し、フサを落ち着かせる。
「彼女の容態は最初はかなり危険でしたが、今は徐々に回復を始めて居ます。
しかし、彼女の持病である病気は怪我のショックによって急激に彼女の体を浸食して行きました。
非常に残念ですが、彼女の人格は後々崩壊するでしょう・・・」
フサは一瞬で頭の中に多大なる情報が流れ込んでいく。

つーの怪我は問題はないが、持病によって人格が崩壊するという事。
これから何をしても彼女の病気は回復しないという事。
これから彼女は唯笑う事しか出来ない基地外になってしまうという事。

全てフサの信じたくない事実。
残酷な現実。

フサの頭の中は無と白の空間が消え、闇と黒の空間が広がって行った。
医者が去って行った後でもフサはその場に立ち尽くす。
あまりにも残酷すぎる事実。

「ふざけるな!」
フサの硬く握りこまれた拳が、病院の壁に鈍い音共に当たる。
今度は反対側の拳が病院の壁に当たる。
渾身の力を込めた拳だったため、二〜三回続けると薄らと赤みが拳に広がる。

ドォン!

一番最後に放たれた拳には既に内出血が至る所に出来ており、皮はずるむけていた。

何も出来なかった自分への怒り。
愛する彼女を助けられなかった怒り。
愛する人が消えていく哀しみ。
自分の非力さへの悔しさ。

すべての感情が最後の拳に込められていた。
しばらくフサは拳を病院の壁に突けたまま頭を俯ける。

そして、灰色のタイルに水滴がシミをつける。
一滴ずつ、一定のタイミングで・・・

四幕 〜一人称視点に戻ります〜

2006年 フサ中三

ギコの言葉に胸を打たれたのは良いが、やはり、病院まで歩こうとすると少し抵抗がある。
彼女の狂った顔はもう何万回と見ているからな・・・
外は雨が未だに降っているが其処まで強くないし、傘を借りる必要もないだろう。
教師に具合が悪いと言って早めに帰らしてもらったが、やはり病院への道を歩こうとすると、本能的に躊躇する。

勇気を振り絞って一歩一歩ゆっくりと歩く。
傍から見れば結構な怪しい人物だろう。
だが、今のオレに他人の目を気にしてる余裕はない。

つーに今までいえなかった事を言う。

唯それだけ。
例え彼女が狂っていても、オレには関係ない。
心の中では彼女は彼女なのだから・・・

さっきまで動かなかった足を無理やり動かし、歩きから走りへとかえる。
学校から病院までは走って十分程度のところにある。
結構中途半端な時間のためか、歩道を歩く人は少ない。
だが、相変わらず車の量は多い。

オレは無心なのか何か考えているのか自分でも解らなかった。
ただ、病院という唯一つの目標だけを持って走り続けた。

病院に着くと同時に受付などは目もくれず、彼女の居る部屋まで走った。
胸の中に彼女に言いたい事をたくさんこめて……
彼女はもう壊れてしまっている事など頭の中には一言も入っていなかった。

後ろからは誰かが叫ぶ声が聞こえるが、そんな事はオレにとってはどうでも良い。
彼女の部屋へと着くと同時に、扉を開け、ゆっくりと彼女の元へと歩く。

彼女は相変わらず笑い続けていたが、しばらくオレが見つめていると、うとうととし始め、目をゆっくりと閉じて行った。
其れを見た後でオレは彼女のベッドにゆっくりと近づく。
自分でも聞こえないほど足音を消して……

横においてあった椅子を手近なところへと寄せ、其処へ座る。
目の前で気持ちよさそうに寝ている彼女の真紅の手をオレの手に取る。
寝て間もない頃だったので手はまだ少し冷たい。

「つーちゃん。久しぶりだね・・・
今日は君が寝ているうちに話したい事を話すよ」
寝ている彼女に微笑みながらオレは彼女に挨拶をする。
しても意味の無い事なのはわかっていた。
だけど、彼女に何か最初に言いたかったのだ。
彼女がここに居るという印が・・・

「つーちゃん。
オレは……君が好きだ。君がどんな状態だったとしても、これは確実にいえることさ」
今までいえなかったことがフッと口から自然に出る。
あんなに彼女に言いたかったのに……
彼女がこんな悲惨な状態になっているときに言っても仕方がない。
内心そんな事を思いながらも彼女に言う事はまだ終わってない。

「今までいえなくてごめんね。
君の心が有る時に言えばよかったと後悔する日は一日もなかったさ。
でも、過ぎた事考えても仕方ないよね……
だから、此処で君に言ったんだ……君がどんな状態でも、どんな病気を患っていても、僕は君を永遠に愛し続けるよ」
彼女の綺麗な左の頬に口を押し当てた後で、彼女の病室をゆっくりと出た。

病院からの帰り道は思っていたよりスッキリしていた。
彼女に言いたかった事がすべて言えたからかも知れない。
しばらく歩くと、頬に何かが零れ落ちる感じが薄らと感じ、頬に手をやる。

「降ってきたな……」
誰も居ない病院からの帰り道。
車などの騒音だけが、オレの心の中に響く。

心の中の闇黒が取れたかどうかはオレには分からない。
だが、今此処にある彼女の思いを、闇黒に浸すような事はもう絶対にしない。
彼女が存在してくれる限り、心の中の闇黒が増える事はもうないだろう。
ただ、オレは其れを願う。

ピー・・・ピー・・・ピー・・・

一人の病室で、一人の少女が目を覚ます。
誰も居ない暗い病室の中で。
推測だが、今の時間は夜の八時程度であろう。

黄金色の二つの水晶が暗い病室を泳ぐ。
そして、二つの水晶から透明なものが流れ出る。

「フサ……今まで迷惑かけてすまなかったな……
今までの時間を、大切にするからな……」
高く、綺麗な声が病室の中に響き渡る。
彼女の病気は一瞬だけ彼女の意思を解放した。
其れによって、彼女は一瞬だけ彼女の意思を言う事が出来たのだ。

彼女の最後の言葉は彼に対する感謝の言葉。

彼女への最後の言葉は愛の告白。

そして、彼女はベッドから立ち上がり、机にあった物を取り上げると、彼女は笑い始めた。
甲高く、聞いてるほうが狂いそうな声が、小さく暗い部屋に響き渡る。
彼女の病気特有の笑い声だ。
だが、しばらくすると、彼女自体がしゃべり始め、体が震え始めていた。

「これからも……お前に支配されるオレだと思うな……
貴様を殺して、自由になってやる……また……あの頃のオレに戻るんだからな!」

途切れ途切れに放たれる自らへの言葉は、段々と覚悟へと変わって行った。
そして、左手に持った物を、自らの手首に当てる。

「じゃあな……フサ……」

闇黒が支配する病室の中で新たな色が加わる。
真紅。
其れだけが、闇黒と唯一つ調和していた。


「ん……?」
何かを感じた。
だから振り向いた。
誰も居ないはずの道を、雨の所為か真っ黒に染まっている空を見上げながら。
病院はもう遠い。
無意識に歩いていたため、正確な道程はわからない。
だが、結構な距離を歩いていた。
前を見直せば、学校はもう直ぐ。

何故かは分からないが、病院に向かってさよならをする。
永遠かもしれない。これからもう二度と行けなくなるかも知れない。
だからかな……
それ以外にも理由はあったのだろうけど……
あまり考えずに病院へと別れを告げた。


永遠のね。

これ以上考えれば、心の闇はまた増えるばかりだから……

後書き
房津の話を作った事が無かったので作ってみました。
なにこれとかいう質問は受け付けないので。